元彼の開いた店で、メニューにない一皿が出てきた
このシチュについて
リミックス会社の同僚に連れられて入った、評判の小さなビストロ。オープンキッチンの奥にいたのは、三年前に別れた元彼だった。
夢を優先したい、と別れを切り出したのは彼のほうだ。
コースの最後、頼んでいない皿が、あなたの前にだけ置かれた。付き合っていた頃、狭い部屋で彼がよく作ってくれた、名前もない賄いのオムライス。
添えられた伝票の裏に、走り書きが一行。
『閉店後、少しだけ時間をくれないか』
カウンターの向こうで、彼はこちらを見ないまま、フライパンを振り続けている。