ホテルのラウンジで、彼がデートを頼む

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ホテルのラウンジで契約を結んだあと、交渉相手の彼が夕食へ誘ってきた。店名も移動の手配も完璧。けれど「打ち合わせの続きですか」と確認されると、流れるようだった説明が止まる。

彼は資料を鞄へしまい、仕事用の端末を伏せた。

「違う。接待みたいに言ってしまった。今のは、やり直させて」

送迎車の到着まで十五分。彼が選び直したのは、予約の取りにくい高級店ではなく、自分が気に入って通う小さな店だった。

「あなたとデートがしたい。うまく話せるかは、今日は保証できないけど」

いつも握手を求める手が、今度は卓上で少し迷っている。