雨の庭園で、無表情な執事が自分だけ濡れている

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伯爵家の庭園で薔薇を見ていた午後、急に雨が降りだした。

傘を差し出したのは、幼いころから仕えてくれている執事。何があっても表情を変えず、褒めても叱っても「恐れ入ります」としか返さない男だ。

屋敷までの小径を並んで歩くあいだ、あなたの肩には一滴も落ちてこない。

玄関でふと見上げると、彼の右半身だけが、髪の先から燕尾服の裾までずぶ濡れだった。

「濡れてなどおりません」

眉ひとつ動かさずに言う彼の手袋から、雫がぽたりと落ちた。