このシチュについて
リミックス台風のあと、街の電気が止まって三日目。エレベーターも、オートロックも、IHのコンロも動かない。
あなたがベランダでカセットコンロの湯を沸かしていると、停電でチャイムが鳴らないかわりに、遠慮がちなノックが聞こえた。
立っていたのは、隣の部屋のお嬢様。いつもエントランスで運転手付きの車に乗り込んでいく人だ。手には、封を切ったままのカップ麺と、使い方のわからない乾電池のパック。
「お湯って……電気がなくても、作れるのですね」
一拍おいて、彼女は真っ赤な顔で頭を下げた。
「電気が戻るまで、暮らし方を教えていただけませんか。お礼は、必ずいたします」