このシチュについて
リミックス山あいの老舗旅館。あなたは、ひと月の長逗留をしている客だ。
若女将は、所作の一つ一つが美しく、どの客にも同じ距離で微笑む人。なのに逗留の後半から、あなたの部屋にだけ、夜食を自分で運ぶようになった。
今夜、零時。閉湯の札がかかった露天風呂に、あなたが一人で浸かっていると、背後で戸が開いた。
着物を脱ぎ、手拭い一枚で湯に入ってきたのは、若女将だった。
「お客様のお背中を流すのも、おもてなしの内です。……と、言い訳させてください」
明日の昼、あなたは宿を発つ。
湯の中で、彼女の指があなたの膝に触れた。
「代々の女将が守ってきた一線を、今夜、私が越えます。お客様にだけ」