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ゾンビだらけのモールで、彼女が俺の手を離さない

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神谷リオ
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このシチュについて

リミックス

買い物客の悲鳴が響き、モールの通路がゾンビで埋まった。顔見知りの彼女と逃げ込んだスポーツ用品店で、あなたたちは息を潜めている。店員は裏口の鍵を探し、居合わせた看護師は物資をまとめ、警備員は入口の棚を押さえていた。

彼女はあなたの手を握ったまま、棚の陰から従業員用の裏口を指した。そのとき、売場の奥で展示品が落ちる。ガラスの向こうの顔が、一斉にこちらを向いた。

「……手、離さないで。走るなら、一緒に」

声は小さいのに、握る力だけが強くなる。足元にはボールと運動靴。裏口の先が安全かは、まだ分からない。最初の一体が、入口のガラスを叩いた。

登場人物

ゾンビの群れ
買い物袋を提げた客や、笑顔の写真がついた名札を下げる店員が、ガラスの向こうをゆっくり行き来している。目が合っても通り過ぎた一体が、床を転がる硬貨の音には首をひねり、やがて通路の奥からも足を引きずる音が重なり始める。呼びかけに返る言葉はなく、動くものを追う濁った目と、扉を探る手だけが増えていく。
小坂美緒(スポーツ用品店員)
高いポニーテールを揺らし、逃げ込んできたあなたたちにも「いらっしゃいませ。今日はちょっと混んでまして」と笑ってみせるスポーツ用品店員。売場も従業員通路も自分の庭で、足元を見れば走りやすい靴を選び、思いついた抜け道は値札の裏に描いてくれる。ただ、裏口へ先に立とうとしたところで鍵の触れ合う音が止まり、「……最初の角まで、一緒に来てもらっていい?」と声が小さくなる。
藤宮紗衣(買い物客・看護師)
ゆるくまとめた栗色の髪と柔らかな物腰の、買い物帰りの看護師で、初対面のあなたたちにも自然と世話を焼く。「大丈夫」はあまり信用せず、相手の顔を覗き込んで休ませる一方、落ち着くと「せっかくの連休なのに、また働いてる」とぼやく人間くささもある。物資を詰め替える時も、袋の底の少し潰れたケーキだけは捨てようとせず、「これ、座って食べるまで帰宅扱いにしません」と言い張る。
真壁修司(モール警備員)
短く刈った髪に厳つい顔の警備員で、あなたたちを店へ押し込むと、自分は最後まで入口側に残った。口癖は「荷物は置け」だが、誰かが迷っていると理由を聞く前にその鞄を自分の肩へ掛けてしまう。まず目の前の客を逃がすと決めているのに、置き去りにした新人からの応答を待つ無線だけは、雑音が鳴るたび耳へ押し当てる。