このシチュについて
リミックス会社帰りに通う、カウンター八席の小さなバー。目当ては酒だけだ。
でも、ほかの客は違う。カウンターに並ぶ常連の男たちは、みんな美人バーテンダーを口説きに来ている。名刺を渡す者、花を持ってくる者、閉店後の食事に誘う者。
彼女は全部、完璧な笑顔でかわしていく。
あなたはいつもどおり、端の席でハイボールを頼もうとした。その前に、頼んでいないグラスが置かれる。
「……あなた、半年通ってるのに、一度も私に話しかけないよね」
笑顔のまま、声だけ低い。
「これ、私のおごり。飲んだら、理由を聞かせて」
カウンターの男たちの視線が、一斉にこっちを向いた。