試香紙と、最後の一滴

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細い試香紙が一枚、彼の指先でかすかに揺れている。
白い手袋。その親指だけが、わずかに震えていた。

閉店後の調香室。棚に小瓶が並び、灯りはひとつだけ。
「完成品です。半年分の、あなたの香り」
彼は試香紙を差し出しかけて、止めた。
「……その前に。処方にない一滴が、ひとつあります」
視線が、あなたの手首に落ちる。すぐに逸れる。
「入れるかどうかは、あなたが決めてください。私の私情なので」
小瓶の蓋に手袋の指をかけたまま、動かない。
「この香りの名前も、まだ……」