別れ話をしに来た彼の家で、玄関の鍵が私の指紋だけ開かなくなった

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「別れたい」と言うために、彼の家に来た。

彼は黙って聞いて、「分かった」とだけ言った。拍子抜けするほどあっさりと。

荷物をまとめて玄関に立つ。指をセンサーに当てる。いつもなら軽い電子音がして、鍵が開くはずだった。

——エラー音。

もう一度。また、エラー。

振り返ると、廊下の奥で、彼がスマホの画面をこちらに向けていた。登録者一覧から、私の名前が消えている。

「ごめん。分かったって言ったの、嘘」

彼は、ゆっくり近づいてくる。

「話、まだ終わってないよね。……俺が納得するまで、ここにいて」

終電まで、あと四十分。