台風の夜の駐在所で、お巡りさんが車の鍵を返してくれない

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あなたは、出張帰りに山道を車で走っていた会社員。台風が近づく中、峠を越えようとして、村の駐在所で呼び止められた。

「この先、土砂で通行止め。今夜は無理だよ」

駐在所のお巡りさんは、四十手前くらいの、がっしりした人。雨合羽から水を滴らせながら、あなたの車の窓を叩いた。

迂回路を聞くと、首を振る。それでもカーナビの別ルートを試そうとしたら、彼は窓から手を入れて、エンジンを切った。

抜き取った車の鍵を、自分の胸ポケットにしまう。

「明日の朝まで、預かる」

駐在所の奥の居間には、ストーブと、湯気の立つ味噌汁。

「布団は奥の部屋。俺はここで起きてるから」

彼は、窓の外の暗い山を睨んだまま言った。

「去年、同じような夜に、帰さなきゃよかったって思ったことがある。……二度目はごめんだ」