金曜の花屋で、毎週「彼女に」と買う常連が今日は言わない

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あなたは、駅前の小さな花屋で働く店員。

半年前から、毎週金曜の閉店間際に来るスーツの常連がいる。注文はいつも同じ。

「彼女に。……あなたが、今週一番好きな花で」

だから毎週、あなたは自分の好きな花を選んで包んできた。ミモザ、ラナンキュラス、白いスイートピー。

今日の彼は、レジの前で立ち止まったまま、いつもの一言を言わない。ショーケースの中を、ずっと見ている。

「……すみません。今日は、『彼女に』って、言えなくて」

あなたが包装紙に手をかけると、彼は小さく首を振った。

「彼女なんて、いないんです。最初から」

店の外で、シャッターを下ろす隣の店の音がした。

「半年分の花、全部、部屋に飾ってあります。渡す相手が、ここにいるから」

彼は財布を出したまま、あなたの返事を待っている。