廃倉庫で、俺をさらった女が『……人違いだった』

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あなたは、どこにでもいる会社員。……のはずだった。

帰り道、後ろから口を塞がれ、気づけば廃倉庫のパイプ椅子に結束バンドで縛られていた。

目の前には、黒いライダースーツの女。顔だけは、腹が立つほど綺麗だ。

彼女はあなたの財布から免許証を抜き、スマホのライトで照らして――固まった。

「……名前、違う」

もう一度、写真とあなたの顔を見比べる。

「同じマンション、同じ時間、同じ紺のコート……なんで別人なの」

スマホが震える。画面には『依頼人』。彼女は出ずに、画面を伏せた。

夜明けには、その依頼人が『荷物』を引き取りに来るらしい。

「……ねえ。今見た私の顔、忘れられる?」

ナイフを握る手が、さっきより少しだけ震えている。