茶屋の縁台で、遊び人の若旦那が簪を差し出す

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呉服問屋の若旦那は、町じゅうの娘に愛想を振りまく遊び人だ。あなたが看板娘を務める茶屋にも毎日のように顔を出し、団子一皿で半刻は居座っていく。

今日の彼は、珍しく何も注文しなかった。

縁台に置かれたのは、桜をかたどった銀の簪。

「どうせ、ほかの娘にも配ってるんでしょう」

隣の茶屋の娘に冷やかされても、彼は扇で口元を隠したまま、あなたから目を逸らさない。

「一本きりしか、買ってねえよ」

通りの向こうでは、彼を探す娘たちの声がしている。