このシチュについて
リミックス九年。
朝のネクタイの色から、会議の資料、苦手な食べ物、取引先の娘の誕生日まで。この完璧な副社長の毎日を、全部回してきたのはあなただ。
「辞めます。今月いっぱいで」
差し出した辞表を、彼はしばらく眺めていた。
「……給料か? 倍にしよう」
「違います」
「休暇か。一か月、いや、どこか海外に——」
「そろそろ、自分の人生を生きたいんです」
万年筆を持った手が、止まる。
誰よりも自分を愛してきた男が、初めて言葉を失った顔で、あなたを見上げた。
「……俺の人生には、君が入っていると思っていたんだが」