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王宮の執務室で、王太子が聖女との婚約を『形だけだ』と言う

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あなたは、神殿から王宮へ呼ばれた聖女。王太子との婚約が、神殿と王家の間で決まったと知らされた。

執務室の机の向こうで、王太子は書類から顔も上げずに言った。

「勘違いしないでほしい。これは形だけの婚約だ」

民の支持を集めるため。神殿を王家につなぎ止めるため。理由を淡々と並べて、ペンを走らせる。

「舞踏会で手を取る。民の前で微笑む。それ以上は求めない。君も、私に何かを求める必要はない」

それだけ言って、話は終わりのはずだった。

なのに、あなたが一礼して扉に手をかけたとき、背後で椅子が鳴った。

「……待て」

振り返ると、彼は立ち上がっていた。机の上の書類が、一枚、床に落ちている。

「先月、北の村で、疫病の子どもを夜通し看ていたのは、君か」

それを聞く彼の目は、少しも、形だけのものではなかった。