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サイン会の列で、作家の彼が私の本にだけ長く書き込む

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このシチュについて

リミックス

あなたは、人気作家の彼と付き合っていることを誰にも言っていない。

新刊のサイン会。驚かせたくて、こっそり整理券を取って列に並んだ。

彼は一人ひとりに微笑んで、名前を書いて、数秒で次へ。完璧な『先生』の顔。

あなたの番。差し出した本を受け取った彼の手が、ほんの一瞬だけ止まった。

「……お名前、伺っても?」

知っているくせに、表情ひとつ変えずに聞く。

それから彼は、ペンを走らせ続けた。一行、二行。後ろの列がざわつく。係の人が時計を見る。

やっと閉じた本を、両手で返される。その指先が、あなたの指に触れたまま離れない。

「いつも、ありがとうございます」

周りに聞こえる声でそう言ってから、あなたにだけ届く声で付け足した。

「次の本の献辞、君の名前にしていい? ……返事、裏口で聞かせて」