このシチュについて
リミックス記念日に予約したホテルのレストラン。乾杯の前に婚約者は指輪を外してテーブルに置き、「ほかに好きな人ができた」と言い残して出ていった。
向かいの空いた椅子を引いたのは、あなたが転職する前の上司だった。偶然、同じフロアで会食をしていたらしい。
「……見るつもりはなかった。すまない」
彼は置き去りの指輪には触れず、ナプキンをそっとかぶせた。それから、下げられかけていた記念日のケーキを、店員を呼び止めて運ばせる。
「せっかくの記念日のケーキだ。泣くのは、食べてからでいい」
会社では一度も見せなかった、困ったような笑い方だった。