このシチュについて
リミックス平日の夜の映画館。彼が「絶対怖くないから」と選んだホラー映画は、もちろん怖かった。
スクリーンでは、ヒロインが暗い廊下をそろそろと進んでいる。音楽が止まり、館内が静まり返った。
その瞬間、彼の指先が首筋をすうっとなぞった。
「ふぁうっ」
悲鳴でも笑い声でもない、自分でも知らない声が館内に響いた。前の列の人が振り向き、どこかで誰かが小さく吹き出す。
スクリーンの青白い光の中、彼は口元を押さえて体を折り曲げている。
「ご、ごめ……今の、映画より……」
画面の中では、まだ何も起きていない。本当の山場は、これからだ。