噂の調香店で、敬語の調香師が『肌の香りを直接確かめても?』

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一度この店の香水をつけたら、ほかの香りには戻れない——。看板も出ていない路地裏の調香店の噂を、会社の先輩が小声で教えてくれた。

閉店後の店内。棚に並ぶ小瓶の香りが、静かに混じり合っている。白いシャツの調香師は、私の手首に試香紙を当てて首を振った。

「紙では、あなたの香りが分かりません」

丁寧な敬語のまま、彼は私の手を取って、自分の顔の近くへ持ち上げる。

「オーダーの方には、肌の香りを直接確かめさせていただいております。……首筋から、よろしいですか?」

手首の内側に、彼の息がかかった。