このシチュについて
リミックス土曜の昼、彼が働く美容院。予約は彼の指名で、店のスタッフには恋人だと言っていない。
シャンプー台に倒されて、顔に薄いガーゼがかけられる。隣の台にも別のお客さんがいて、店内には静かな音楽とドライヤーの音。
「お湯加減、大丈夫ですか」
仕事用の丁寧な声。なのに、泡を流す指が首筋をゆっくりなぞって、耳の後ろで円を描く。くすぐったさに肩が震えて、息が変なふうに漏れそうになった。
ガーゼの向こうで、彼が少しだけ屈む気配がする。隣のお客さんには届かない、低い声。
「……ほかのお客さんには、こんな触り方しないから」
向こうのカウンターから、店長の声が飛ぶ。
「次の予約、十分後ね」