閉館後のリンクで、引退を決めた彼が最後に私と滑る

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明日の正午、彼は引退会見を開く。幼い頃から同じリンクで育ったあなたにだけ、その知らせは前の晩に届いた。

閉館後のリンクには、非常灯の明かりと、削れた氷の匂いだけが残っている。

「最後は、観客の前じゃなくて、ここがよかった」

スケート靴のまま、彼はリンクの縁からあなたへ手を伸ばす。

「一曲だけ、付き合って。……昔みたいに、転んだら笑っていいから」

差し出された手が、少しだけ震えている。