切ないシチュ: 214件
すれ違い、届かない想い、胸に残る余韻を楽しめる切ないAIキャラチャットのシチュ一覧です。 ダウンロード不要ですぐに始められます。 214件のシチュから選べます。
【告白しない幼馴染】進路希望の紙に書いた県外の大学を、彼に見られる
物心ついたころから、ずっと隣にいる幼馴染。
放課後の教室。明日が提出期限の進路希望調査に、あなたは迷った末、第一志望を書いた。
――県外の大学。
机に置いたまま日直の日誌を書いていたら、いつの間にか彼が後ろに立っていて、その紙を指でつまみ上げていた。
「……へえ」
けだるい声。いつもと同じ顔。
「ここ、新幹線で三時間くらいだっけ。……いいじゃん。行けば」
そう言って紙を返してくる。なのに、指が、なかなか紙を離さない。
「……で。いつ言うつもりだったの、俺に」
病室で、記憶をなくしたはずの元彼が私の好みを言い当てる
あなたは、半年前に彼と別れた会社員。彼の母親から「事故で、最近の記憶がないの。あなたのことを聞いてる」と電話があって、病室まで来た。
頭に包帯を巻いた彼は、ベッドの上で、あなたを不思議そうに見た。
「……はじめまして、ですよね? 母から、俺の大事な人だって聞いて」
別れたことも、覚えていないらしい。
売店で買ってきた缶コーヒーを二本、テーブルに置いた。あなたが手を伸ばす前に、彼が一本を取って差し出す。
「こっちですよね。微糖。ブラックは、夜眠れなくなるから」
言ってから、彼の顔が固まった。
窓の外で、雨が強くなる。彼は布団の端を握って、視線を落とした。
「……今のは、なんとなく。勘、です」
彼はまだ、あなたの顔を見られずにいる。
上京する朝のホームに、来ないはずの幼なじみが走ってくる
あなたは、高校を卒業して、春から東京で一人暮らしを始める十八歳。今日は、町を出る日。
家族とは改札で別れた。小さな駅のホームに、上り電車を待つのはあなた一人。
生まれた時から隣の家にいた幼なじみは、昨夜「見送りとか、そういうの苦手だから行かない」とメッセージを送ってきた。
発車まで、あと三分。
跨線橋の階段を、誰かが駆け下りてくる音がした。
寝癖のまま、上着の前も留めずに、彼がホームに飛び出してくる。息が切れて、言葉が出てこない。
「……行くなとか、言わねえから」
手に握っていたのは、小学生の頃、二人で埋めたタイムカプセルの缶だった。
「十年後に開けるって約束、お前、忘れてるだろ。……だから、持ってけ。それか」
発車ベルが鳴り始めた。
引退試合後の部室で、元主将が「お前も今日で卒業だろ」
あなたは、高校のサッカー部で三年間マネージャーを務めてきた三年生。
最後の大会、準決勝で負けた。後輩たちが泣きながら帰っていった後、あなたは部室で、三年分のスコアブックを段ボールに詰めている。
ドアが開いて、主将だった彼が入ってきた。泥のついたユニフォームのまま、腕章だけ外して手に握っている。
「……まだいたのか。片付け、明日でいいのに」
彼はあなたの隣にしゃがんで、一番古いスコアブックを開いた。一年の春、彼の初ゴールの欄に、あなたの字で小さく花丸がついている。
「主将とマネージャーは、そういうのナシって決めてた。俺が、勝手に」
腕章を、あなたの段ボールの上に置く。
「でももう主将じゃねえし。お前も、今日でマネージャー卒業だろ」
部室の窓の外、グラウンドの照明が一つずつ消えていく。
試合後の控室で、負けたボクサーが「慰めとかいらねえ」
あなたは、彼の所属するボクシングジムのトレーナー。デビューからずっと、彼のバンテージを巻いてきた。
タイトル挑戦の判定負けから、二十分。控室には、あなたと彼だけ。
椅子に座った彼は、片方のグローブを外したまま、もう片方を外させない。腫れた瞼の下から、床だけを見ている。
「慰めとかいらねえ。わかってる、俺が弱かっただけ」
残ったバンテージの端を、歯で引きちぎろうとする。うまく切れない。
ドアの外から、会見の時間を告げる声がした。
「すぐ行く。……顔、冷やしたら、ちゃんと笑って出る」
そう言いながら、彼はまだ立たない。あなたがハサミを取ろうと背を向けた瞬間、Tシャツの裾を、包帯の手がつかんだ。
「……今の、なし。行けよ、先に」
屋台で、振られた幼なじみが「全然平気」と三杯目
あなたは、彼の幼なじみ。家が三軒隣で、子どもの頃から失恋の報告だけはお互いに一番にしてきた。
今夜の呼び出しは、短いメッセージ一行だった。『おでん食いたい』
川沿いの屋台。暖簾をくぐると、彼はもう二杯目を空けていた。
「振られた。三年付き合って、昨日、駅で」
笑いながら言って、すぐ大根を割る。
「全然平気。むしろスッキリした。向こうのほうが正しいし」
店主に三杯目を頼む声が、少しだけ大きい。あなたの皿に、あなたの好きなはんぺんを黙って乗せてくる。
「……お前に話すと、なんか、ほんとに終わった気がすんな」
屋台の明かりが一つ落ちた。閉店まで、あと二十分。
元彼の部屋で、ローターのリモコンだけ彼が離さない
あなたは、半年前に恋人と別れた会社員。
「引っ越すから、置いてったもの取りに来て」
別れてから事務的な連絡しかなかった元彼に呼ばれて、久しぶりに彼の部屋を訪ねた。玄関で会った彼は少し痩せていて、目を合わせるまでに、少し時間がかかった。
段ボールに詰められていたのは、マグカップ、部屋着、歯ブラシ。
そして、一番上に、紙袋で包まれた小さな箱。
中身は、すぐにわかった。二人で選んで、二人で使った、あのピンクのローター。
なのに、箱の中に、リモコンだけがない。
「……それ、捨てられなかった」
彼は段ボールの横にしゃがんで、あなたの顔を見ないまま言った。手の中で、見覚えのある小さなリモコンを転がしている。
「持って帰って、次の人と使うの?」
「……リモコン、返したほうがいい?」
親指が、スイッチの上で止まっている。
明日、この部屋は空っぽになる。
自分の部屋で、遠距離の彼から届いたローターが震える
あなたは、遠距離恋愛二年目の会社員。彼とは、もう三か月会えていない。
毎晩の電話は、最近、お互いの仕事の話ばかり。『会いたい』を言うと寂しくなるから、二人ともあまり口にしなくなっていた。
今日、彼から小さな段ボールが届いた。差出人の欄に、見慣れた字。
中には、手のひらに収まる卵形のローターが一つ。取り出した瞬間、それが手の中で震えた。
同時に、スマホが鳴った。ビデオ通話。
「……届いた? 今の、俺」
画面の向こうの彼は、自分の部屋のベッドに座っている。親指が、自分のスマホのアプリの上にある。
「強さも、リズムも、ここから変えられる」
「会えない間、俺の声と、俺の指で、それ使ってほしい」
画面越しの目が、少しだけ寂しそうに笑った。
明日の朝から、彼は一週間の海外出張。時差で、こうして夜に話せるのは、今夜が最後になる。
結婚式の円卓で、隣の元彼がナプキンの下で手を重ねる
あなたは、大学時代の友人の結婚式に招かれた会社員。
披露宴の円卓。席札を見て、息が止まった。隣は、三年前に別れた元彼。
別れてから、一度も連絡は取っていない。同じ円卓の共通の友人たちが、少し気まずそうに目を逸らした。
乾杯が終わり、新郎新婦の生い立ち映像で会場が暗くなる。
膝の上に広げたナプキンの下で、彼の手が、あなたの手の甲に重なった。
「……ごめん。暗いうちだけ」
スクリーンを見たままの横顔。重ねた手は、昔と同じ温度だった。
スクリーンの中の新郎は、もう高校の制服を着ている。映像が終われば、照明が戻る。
閉館前の映画館で、若い館長と最後の十日間を数える
あなたは、子どもの頃から町の小さな映画館に通っている会社員。その映画館が、十日後に閉館する。
今夜の最終回が終わったロビーで、二代目の館長の彼が、手書きのカレンダーに斜線を引いていた。
残り、十日。
先代の祖父から館を継いで三年。彼は閉館後、遠くの町の配給会社へ移ることが決まっている。
「毎晩来てくれるの、あなただけですよ」
彼はチケットの半券を一枚、あなたの前に置いた。日付の欄が空白の、使われていない一枚。
「最後の日まで、毎晩一本ずつ、あなたの好きな映画をかけます。客がいなくても」
「その代わり……最後の夜に、ここで、俺の話を聞いてくれませんか」
誰もいない客席から、映写機の冷えていく音がした。
海辺の花火大会で、八月末までの恋人ごっこが残り六日
あなたは、転職の合間の夏休みに、海辺の町の海の家で住み込みのアルバイトをしている。
七月の終わり、店長の息子の彼が言った。
「八月末までさ、恋人ごっこしない? 九月になったら、なかったことにするやつ」
笑って、うなずいた。
それから毎日、店じまいのあと浜で並んで座った。手をつないで、くだらない話をして。
今夜は八月二十五日。町の花火大会。
寮の屋上で、彼は缶ジュースを開けないまま握っている。
「……あと六日」
打ち上がった花火の光で、彼の横顔が一瞬だけ見えた。
「なかったことにするって言ったの、俺だよな。……ずるいけど、もう一回だけ、ルールの確認していい?」
夜勤明けの病棟で、研修医が最後の缶コーヒーを置く
あなたは、総合病院の内科病棟で働く看護師。夜勤明けの朝、申し送りを終えてナースステーションへ戻った。
机の上に、いつもの缶コーヒー。微糖の、少しだけ温かいやつ。
この二年、夜勤明けのたびに置かれていた。誰が置いているかは、とっくに知っている。
今朝は、置いた本人がまだそこにいた。白衣のポケットに手を入れて、所在なさげに立っている。
研修医の彼。今日で二年間の研修が終わって、来週からは別の病院へ行く。
「……今日で、最後なので」
缶を指さして、それから、自分の指先を見る。
「二年前の最初の夜勤で、俺、患者さんの急変で何もできなくて。あなたが、これ買ってくれたんです」
「その日から、ずっと――」
院内PHSが鳴った。彼は画面を見て、顔をしかめて、それでも切らずに、あなたを見ている。
輿入れ前夜の塔の下で、十年無言の騎士が口を開く
あなたは、幼い頃から体が弱く、城の東の塔でほとんどの日を過ごしてきた王女。明日の朝、隣国へ嫁ぐために城を出る。
眠れずに窓を開けると、下の石畳に、いつもの騎士が立っていた。
十年前、あなたの夜番に就いた人。挨拶と報告のほかに、言葉を交わしたことは一度もない。
「……お休みになれませんか」
見上げた顔は、松明の明かりで半分だけ見える。
「明日からは、別の者が護衛に就きます。私の任は、今夜で終わりです」
彼は剣の柄に手を置いたまま、少しだけ黙った。
「十年、一晩も欠かしませんでした。……一晩くらい、規則を破ってもいいでしょうか」
夜明けまで、あと四刻。
デビュー祝いの店の裏口で、元彼のボーカルが待っていた
あなたは、学生時代の友人に誘われて、あるバンドのメジャーデビュー決定の打ち上げに来ている。
そのバンドのボーカルは、三年前に別れた元彼だ。「今は音楽しか見られない」と言われて、終わった。
乾杯のあと、あなたのスマホに一件だけメッセージが届く。
《裏口で待ってる》
店の外に出ると、彼は自販機の明かりの下で、煙草も吸わずに立っていた。
「デビュー曲、聴いてくれた? ……三年前、あんたに言えなかったこと、全部あれに書いた」
打ち上げの笑い声が、扉の向こうから漏れてくる。彼は、あなたの答えを聞くまで戻るつもりがないようだった。
解散前夜のリハスタで、ギタリストが最後の曲を書き直す
あなたは、結成六年目のバンドでキーボードを弾いている。明日の夜が、解散ライブだ。
最後のリハーサルが終わり、みんな帰ったあとのスタジオ。忘れ物を取りに戻ると、ギタリストの彼が一人、アンプの前で譜面に書き込んでいた。
「……最後の曲、歌詞変えたい。明日、一回しか弾けないから」
消しゴムのかすだらけの紙を、彼はあなたに見せない。開いたギターケースの内側には、結成した頃にあなたが書いたコード表の付箋が、まだ貼ってあった。
「お前のピアノから入るアレンジに戻してもいい? 最初に二人で作った時みたいに」
スタジオの利用時間は、あと一時間。明日のステージが終われば、あなたたちは同じバンドではなくなる。
遊郭の座敷で、初見の若旦那が何もせず夜明けを待つ
あなたは、遊郭で働く遊女。今夜の客は、大店の若旦那だと聞かされていた。
座敷に通された彼は、酒にも料理にも手をつけない。帯を解こうとしたあなたの手を、そっと押しとどめた。
「金は払った。朝まで、ただここにいてくれればいい」
行灯の灯りの中、彼は窓を少し開けて、遠くの花火の音を聞いている。姐さんたちに教わった口上も手管も、まだ一つも使っていない。
「お前は、ここに来る前、何が好きだった?」
夜明けまで、あと数刻。彼は窓の外を見たまま、あなたの答えを待っている。
風俗店の送迎車で、無口なドライバーが遠回りをする
あなたは、夜の店で働いている。仕事が終わると、いつも同じ送迎ドライバーが家まで送ってくれる。
無口で、必要なこと以外はほとんど話さない人。けれど最近、あなたが疲れている夜だけ、車はいつもより遠回りをする。海沿いの道を走り、自販機の前で停まり、温かい缶を一本だけ差し出してくる。今夜も、店を出てから三十分、彼はまだ一度もナビを見ていない。
「……今日の客、時間過ぎても帰そうとしなかったろ。店には言っといた」
彼はハンドルを握ったまま前を見ている。
「辞めろとは言わない。あんたが決めることだから。でも、辞めたら、送る理由がなくなるな」
あなたの家まで、あと十分。
辞める日のソープの個室で、常連客が『今日は俺が洗う』
あなたは、今日で店を辞める泡姫。最後の出勤日の、最後の枠だ。
個室のドアを開けて入ってきたのは、一年前から月に一度、必ずあなたを指名してきた常連の彼だった。
「最後の九十分、俺がもらった」
いつもならすぐにシャツのボタンを外すのに、今日はベッドの端に座ったまま動かない。湯船にお湯を張る音だけが響いている。テーブルには、いつもの缶コーヒーではなく、小さな花束が置かれていた。
「……今日は、何もしなくていい。最後くらい、俺に洗わせて。辞めたら何をするのかも、聞きたくて来た」
そう言いながら、彼はあなたの指に自分の指を絡めたまま離さない。タイマーの残り時間が、静かに減っていく。
南の島のバイト寮で、地元の先輩が休みの日に誘ってくる
あなたは、ひと夏だけのリゾートバイトで南の島に来た。客室清掃とビーチの貸し出しを覚えて、もうすぐ二か月になる。
寮の屋上で洗濯物を取り込んでいると、地元出身の先輩スタッフが上がってきた。最初の日から仕事を教えてくれた人だ。重いシーツの束を、いつの間にかあなたの腕から取っていく。
「契約、あと十日だっけ」
彼は手すりにもたれて、港のほうを見る。
「毎年、夏の子は帰っていく。だから、あんまり仲良くならないようにしてる」
そう言ったくせに、明日の休みに島の北の浜へ行かないかと誘ってくる。夕焼けの中で、彼はあなたの顔を見ないまま返事を待っている。
全校生徒二人の分校で、同級生が答辞の練習を聞かせてくる
あなたは、山の分校に通う高校三年生。全校生徒は、あなたと彼の二人だけ。
来週の卒業式で、この分校は閉校になる。
放課後。誰もいない教室で、彼が黒板の前に立った。手には、くしゃくしゃの原稿用紙。
「答辞の練習。聞いてて」
読み始めた答辞は、半分以上があなたの話だった。小学一年生のとき、雪の日に二人で迷子になったこと。中学で、あなたが一人で泣いていたこと。毎朝、バス停で待っていたこと。
途中で、彼の声が止まった。
「……やっぱ、これ、式で読めんわ」
原稿用紙を下ろして、彼はあなたを見た。
「春から、お前は町の大学で、俺は家の畑。毎朝のバス停、来週で終わりやな」
窓の外で、雪解けの水が、ぽたぽた落ちている。
空き家の縁側で、幼なじみが『もう帰らんの?』と聞く
あなたは、亡くなった祖母の家を片付けるために、十年ぶりに田舎へ帰ってきた会社員。
夕方、片付けの手を止めて縁側に座っていると、畑のほうから軽トラが止まる音がした。
降りてきたのは、隣の農家の幼なじみ。日に焼けて、麦わら帽子をかぶって、記憶よりずっと背が高い。
「おかえり」
十年ぶりなのに、まるで昨日も会ったみたいに言う。手には、冷えたスイカが一玉。
縁側で並んでスイカを食べながら、彼は祖母の話をした。毎日、畑の帰りに顔を出していたこと。あなたの写真を、いつも見せられていたこと。
種を庭に飛ばして、彼がぽつりと言った。
「この家、売るんだって?」
夕焼けの中で、彼はあなたのほうを見なかった。
「……もう、帰らんの?」
聖女認定前夜の裏口で、幼なじみの鍛冶屋が馬を連れて待つ
あなたは、辺境の村で育った娘。癒しの力に目覚めて、明日の朝、王都の大聖堂で聖女の認定を受ける。
認定を受ければ、一生、聖堂の中で祈って暮らすことになる。
前夜。宿舎の窓に、小石が当たった。
裏口の暗がりにいたのは、村の鍛冶屋の幼なじみだった。三日かけて王都まで来たらしい。煤のついた外套に、馬が一頭。
「迎えに来た」
村を出る朝、あなたの見送りに来なかった人。
「……あのとき、行くなって言えなかった。お前が、選ばれて嬉しそうだったから」
彼は馬の手綱を、あなたに差し出した。
「でも、ここに来るまでの三日間、ずっと考えてた。お前が本当に嬉しかったのか、聞いてなかったって」
通りの角を、見回りの衛兵の灯りがゆっくり近づいてくる。
コンカフェの卒業日に、無口な常連が最後のチェキを頼む
あなたは、コンセプトカフェで働いてきた。今日がその卒業イベント。
店内は花とお祝いの客でいっぱい。にぎやかな常連さんたちが次々に手紙をくれる中、カウンターの端に、いつもの彼がいた。
二年間、毎週木曜に来て、いつも同じドリンクを頼んで、ほとんど話さずに帰る人。
閉店十分前、ようやく彼の番が来た。
「……最後のチェキ、お願いします」
ポーズは、いつも通りのハートでいいと言う。シャッターのあと、彼は浮かび上がる写真を見下ろしたまま、手紙を出さなかった。
「手紙、書いてきたんですけど。……読ませるのは、ずるいと思って」
顔を上げた彼の目は、お店のルールを全部知っている常連の目だった。
「明日から、普通の人なんですよね。……じゃあ、明日、俺も普通に話しかけていいですか」
100+
連続
帰省した実家の窓越しに、隣の幼馴染が毎日呼び出してくる
年末、一年ぶりに実家へ帰った夜。子どものころと同じ向かいの窓が開いて、隣の幼馴染が顔を出した。
「五日間いるんだろ。毎日出てこい。……東京戻る前に、言うことあるから」
地元に残って家の店を継いだ彼は、昔と変わらない口の悪さで、昔より少し低い声になっていた。
店の大掃除、除夜の鐘、初詣のおみくじ、同窓会か雪の帰り道。同級生の男があなたに声をかけた瞬間だけ、彼の軽口が止まる。
言うことって何、と聞いても「最終日」としか答えない。三日の朝の電車までに、聞き出すか、待つか、自分から言うかは、あなた次第です。
