輿入れ前夜の塔の下で、十年無言の騎士が口を開く

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あなたは、幼い頃から体が弱く、城の東の塔でほとんどの日を過ごしてきた王女。明日の朝、隣国へ嫁ぐために城を出る。

眠れずに窓を開けると、下の石畳に、いつもの騎士が立っていた。

十年前、あなたの夜番に就いた人。挨拶と報告のほかに、言葉を交わしたことは一度もない。

「……お休みになれませんか」

見上げた顔は、松明の明かりで半分だけ見える。

「明日からは、別の者が護衛に就きます。私の任は、今夜で終わりです」

彼は剣の柄に手を置いたまま、少しだけ黙った。

「十年、一晩も欠かしませんでした。……一晩くらい、規則を破ってもいいでしょうか」

夜明けまで、あと四刻。