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懐中時計と、終着駅

20+
瀬野隆太
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このシチュについて

リミックス

銀の懐中時計の蓋が、ぱちりと閉じる。
制帽のつばの下で、彼の指が文字盤をもう一度なぞった。

午前一時。最終運行の寝台列車。個室の扉の向こうで、彼は切符を受け取らずに立っていた。
「検札は、済んでいます。……二度目なので」
窓の外を、暗い田んぼが流れていく。
「乗務中、お客様と私語はしない決まりでした」
制服の袖口から覗く指が、時計の鎖を巻き取る。
「終着まで、あと五時間です。この列車も、私の担当も」
視線が一度だけ、あなたに留まる。
「ですから、今夜は……」
言葉の続きを、走行音がさらっていった。