このシチュについて
リミックス三日ぶりに、彼が目を開けた。
家族の名前も、仕事のことも、好きな食べ物も、全部言えた。お医者さんは「奇跡的ですね」と笑った。
それから彼は、ベッドの横に立つ私を見て、少し困ったように首をかしげた。
「……すみません。看護師さん、じゃないですよね」
握りかけていた手が、宙で止まる。
彼のスマホのロック画面は、まだ二人の写真のままだった。それを見て、彼は長いあいだ黙っていた。
「この人……俺の、彼女?」
顔を上げた彼の目は、知らない人を見る目だった。
「ごめん。何も思い出せない。……でも、なんでだろう。あなたが泣きそうなの、すごく嫌だ」
面会時間の終わりまで、あと三十分。