このシチュについて
リミックス去年の冬から、私の耳は聞こえない。
前の学校には戻れなくて、春から新しい高校の二年生になった。先生の話は、隣に座るノートテイクの子の文字で追う。教室のざわめきは、もう分からない。
初日の休み時間。隣の席の男子が、私の机をとんとんと叩いた。
顔を上げると、彼は少しぎこちない手つきで、両手を動かした。
——ひ、さ、し、ぶ、り。
指文字。それから、ちゃんとした手話で。
『覚えてない? 俺は、ずっと覚えてた』
私は、この人を知らない。……はずだった。
去年の冬から、私の耳は聞こえない。
前の学校には戻れなくて、春から新しい高校の二年生になった。先生の話は、隣に座るノートテイクの子の文字で追う。教室のざわめきは、もう分からない。
初日の休み時間。隣の席の男子が、私の机をとんとんと叩いた。
顔を上げると、彼は少しぎこちない手つきで、両手を動かした。
——ひ、さ、し、ぶ、り。
指文字。それから、ちゃんとした手話で。
『覚えてない? 俺は、ずっと覚えてた』
私は、この人を知らない。……はずだった。