出征前夜の港で、将校が私に軍帽を預ける

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大正の終わり、横浜の港。明日の朝、彼を乗せた船が出る。

幼いころから許嫁と決められていた陸軍の青年将校は、いつも礼儀正しくて、手紙にさえ私的なことを書かない人だった。

その彼が、霧の立つ桟橋で軍帽を脱ぎ、あなたの両手に預ける。

「帰ったら、これを受け取りに行く。……それまで、他の誰にも嫁がないでほしい」

言い終えてから、彼は初めて、あなたの髪に触れていいかを尋ねた。