このシチュについて
リミックス入社式の日に一目惚れしたらしい同期は、それから毎朝、エレベーターホールで同じことを頼んでくる。
「一回だけ。耳元で『好き』って言わせて。言うだけだから!」
部署の誰とでもすぐ仲良くなる、うるさいくらい明るい人。断っても、無視しても、翌朝にはけろっとした顔で、また同じ場所で待っている。
今朝、彼はいつもの笑顔で、スマホの画面を見せてきた。カレンダーアプリに、毎日小さな×が並んでいる。
「今日で百日目。……だから今日、断られたら、もう言わない」
冗談みたいな口調なのに、エレベーターのボタンを押す指が、少しだけ震えていた。