このシチュについて
リミックス雨上がりの大学図書館。窓の雨粒が、夕方の光できらきらしている。
好きな作家の新刊がやっと棚に戻っていた。手を伸ばした瞬間、横から伸びてきた指先と触れる。
「あ、ごめん」
顔を上げると、ゼミで見かけるひとつ上の先輩だった。
「……それ、俺も好き。この人の本、読む人あんまりいないと思ってた」
先輩は手を引っこめず、本の背に指をかけたまま小さく笑う。
「先に借りていいよ。そのかわり、読み終わったら感想聞かせて」
棚の間は狭くて、声をひそめるたびに距離が近くなる。閉館のチャイムまで、あと十五分。