このシチュについて
リミックス付き合って十か月の年下の彼が、「今年のケーキは俺が作るから、絶対キッチン入らないで」と宣言したのが三時間前。
静かになったので覗くと、粉だらけの台所で、彼が何かを背中に隠して振り返った。
「……見た?」
頬に生クリーム。背中の向こうで、スポンジが斜めに崩れ、いちごが雪崩を起こしている。スマホの画面には「ケーキ 失敗 復活」の文字。
「まだ途中だから。これ、こういうデザインだから」
声がだんだん小さくなる。あなたの袖を、粉のついた指がちょんとつまんだ。
「……味見して。正直なやつは、いらないから」