コメディシチュ: 87件
コメディのシチュを選んで、好きなキャラと無料でAIチャットを始められます。 ダウンロード不要ですぐに始められます。 87件のシチュから選べます。
飲み会帰りの駅前で、後輩が「先輩の彼氏、今呼んで」
あなたは、会社の先輩社員。半年前、入社二年目の後輩に食事に誘われて、つい言ってしまった。
「ごめんね、彼氏いるから」
彼氏なんて、いない。
今夜は部署の飲み会。帰り道、駅前のロータリーで、後輩の彼があなたの前に回り込んできた。
「先輩。俺、ずっと考えてたんですけど」
人懐っこい笑顔のまま、目だけが笑っていない。
「先輩の彼氏、一回も見たことないんですよね。誕生日もクリスマスも、先輩、普通に残業してたし」
スマホを取り出して、あなたに差し出す。
「今ここに呼んでください。挨拶したいんで。……ちゃんと、負けを認めたいんで」
ロータリーにタクシーが一台、滑り込んでくる。
「来られないなら、俺、もう諦めませんよ」
誕生日、「料理得意」と言った彼氏の台所が煙だらけ
あなたは、付き合って三ヶ月の恋人。今日はあなたの誕生日で、彼の部屋に招かれた。
付き合い始めの頃、彼は言っていた。「料理は得意。フレンチなら一通りいける」
だから今夜は、彼の手料理のフルコースの予定。
インターホンを押した瞬間、ドアの向こうで火災報知器が鳴り始めた。
開いたドアから、白い煙と、焦げたバターの匂いが流れ出てくる。エプロン姿の彼が、フライパンを持ったまま固まっていた。
「……あ、早いね。これは、その、フランベ。わざと。演出」
キッチンの奥には、レシピ本が三冊、全部付箋だらけで開いてある。シンクには、黒い何かが乗った皿が四枚。
「メインは、ちょっと、炭火焼きっぽい感じになってるけど」
報知器を止めようと、彼が椅子に乗って天井へ手を伸ばす。
「大丈夫。前菜は、たぶん、いける」
大学の卒業式で、留年した彼氏がスーツで祝いに来た
あなたは、今日大学を卒業する四年生。袴を着て、学位記を受け取ったところ。
同じ学年で付き合って二年の彼は、単位が二つ足りずに留年が決まった。
「式には行かない。卒業生でもないのに混ざったら、ただの不審者だし」
そう言っていたはずの彼が、講堂の出口で、見たことのないスーツを着て待っていた。腕には、抱えきれないほどのひまわりの花束。三月なのに。
「花屋で一番目立つやつって言ったら、これ出てきた」
周りの卒業生がちらちら見ている。彼の友人が「お前、なんで卒業してない側がスーツなんだよ」と笑って通り過ぎる。
「うるせえ。こっちは来年もう一回着るんだよ。練習」
彼はあなたに花束を押しつけて、袴姿を上から下まで見た。
「……やば。写真、百枚撮っていい? 来年の俺の分まで」
停電したオフィスで、後輩が「暗いの平気」と袖を離さない
あなたは、残業中のオフィスで最後まで残っていた先輩社員。フロアには、あなたと入社二年目の後輩の二人だけ。
二十一時過ぎ、ビル全体の照明が、一斉に落ちた。
モニターも、空調も止まる。窓の外の街の灯りだけが、ぼんやり床に落ちている。
「あ、大丈夫です。俺、暗いの全然平気なんで」
暗がりから、やけにはっきりした声。背が高くて、いつもは重い荷物を何も言わずに運んでくれる後輩だ。
あなたが非常口のほうへ一歩動くと、袖が引っ張られた。
「……あ、いや。先輩がはぐれないように、です」
どこかで空調がカタンと鳴った。袖をつかむ指に、ぎゅっと力が入る。
「今のは、驚いたんじゃなくて。……その、確認です。音の」
スマホのライトをつけようとして、彼は自分の端末を三回落とした。
献血ルームで、消防士が「注射は平気」と目をそらす
あなたは、駅前の献血ルームで働く看護師。
午後のベッドに横になったのは、近くの消防署から署の行事で来たという大柄な消防士。腕まくりした前腕は、あなたの太ももくらい太い。
「全然平気です。火の中に比べたら、こんなの」
そう言いながら、彼の視線は天井の一点から動かない。あなたが駆血帯を巻いた瞬間、反対の手がシーツを握りしめた。
消毒綿を当てると、喉が鳴る。
「……あの、今のは、寒かっただけなんで」
針はまだ、トレーの上にある。隣のベッドでは、同じ署の後輩がこちらを気にしている。
「先輩なんで。ここで顔に出すわけにいかないんで」
小声でそう言った彼の指が、シーツから少しだけ、あなたの白衣の袖のほうへ動いた。
ラブホの玩具自販機で、彼が全種類試すと小銭を積む
あなたは、デート中に恋人の彼とラブホテルに入った会社員。
夕立に降られて、駅裏で見つけた一軒。濡れた服のまま部屋に入るなり、彼の目は、ベッドより先に部屋の隅へ向いた。
小さなガラス張りの自販機。中には、ローター、バイブ、手錠、ローション。
彼はしばらく黙って眺めたあと、財布を逆さにして、テーブルに小銭を積み上げた。
「……休憩、三時間だよな」
「一個ずつ試したら、全部いける」
真剣な顔で、計算している。
「一個目は、選ばせてあげる」
最初の一枚を、自販機のスロットにかざして、あなたを振り返った。
元彼の部屋で、ローターのリモコンだけ彼が離さない
あなたは、半年前に恋人と別れた会社員。
「引っ越すから、置いてったもの取りに来て」
別れてから事務的な連絡しかなかった元彼に呼ばれて、久しぶりに彼の部屋を訪ねた。玄関で会った彼は少し痩せていて、目を合わせるまでに、少し時間がかかった。
段ボールに詰められていたのは、マグカップ、部屋着、歯ブラシ。
そして、一番上に、紙袋で包まれた小さな箱。
中身は、すぐにわかった。二人で選んで、二人で使った、あのピンクのローター。
なのに、箱の中に、リモコンだけがない。
「……それ、捨てられなかった」
彼は段ボールの横にしゃがんで、あなたの顔を見ないまま言った。手の中で、見覚えのある小さなリモコンを転がしている。
「持って帰って、次の人と使うの?」
「……リモコン、返したほうがいい?」
親指が、スイッチの上で止まっている。
明日、この部屋は空っぽになる。
大人のおもちゃ屋で、彼が真剣に一個選ばせようとする
あなたは、付き合って一年の彼とデート中の会社員。
彼は何を買うにも、何日も調べて、比較表まで作る人。昨日の夜も遅くまで、スマホで何かを熱心に読んでいた。
「ちょっと寄りたいとこある」と連れてこられたのは、駅裏のビルの三階。ドアが開くと、壁一面に、見慣れないパッケージが並んでいた。
彼は買い物かごを持って、家電量販店みたいな顔で棚を見ている。
「記念日だし、一個、選んで」
「振動の強さ、形、防水……あ、これレビュー星四・八だって」
真顔でパッケージを裏返して、説明書きを読み上げる。
「どれがいい? 選んだやつ、今夜、全部試すから」
レジの奥で、店員さんがそっと目をそらした。
給湯室で、完璧な後輩が叱られたくてミスしたと白状する
あなたは、入社三年目の会社員。今年の新人の指導係をしている。
彼は誰が見ても完璧な新人だった。なのに、あなたに出す書類にだけ、誤字が一つ。いつも二ページ目の三行目。偶然にしては、整いすぎている。
給湯室で問い詰めると、彼は紙コップを持ったまま、あっさり頷いた。
「……はい。わざとです」
「先輩に叱られるの、好きなんです。眉が寄って、声が低くなって、最後に『次は気をつけて』って言うとこまで、全部」
真顔で言い切ったあとで、彼の耳だけが、じわじわ赤くなっていく。
「明日の再提出、またミスしてきてもいいですか」
催事場の隣のブースで、二週間限定の売り子が張り合う
あなたは、老舗の和菓子店の催事担当。百貨店の地下の催事場で、二週間の出店をしている。
隣のブースは、人気の洋菓子店。売り子の彼は、初日からずっと張り合ってくる。
「今日も、うちの勝ち。シュークリーム二百十個」
閉店後、売上の紙をひらひら見せてくる。
「そっちは大福百九十八個だっけ。単価で逃げるの、なしね」
毎晩そんな調子で張り合って、気づけば十二日目。
今夜、彼は売上の紙じゃなく、自分の店の小さな箱を差し出した。
「……余ったから。あと二日だし、一回くらい、敵の味も知っといて」
箱の中は、売り場に一度も並んでいない、抹茶と白あんのタルト。
「一個しかないから。感想、ちゃんと聞かせて」
ワンルームで、拾った狼が人の姿のまま満月まで居座る
あなたは、ワンルームで一人暮らしをしている会社員。三日前の雨の夜、公園で震えていた大きな犬を、放っておけずに連れて帰った。
今朝、目を覚ましたら、玄関マットの上に、知らない男の人が丸まっていた。
灰色の髪。頭の上に、三角の耳。腰のあたりで、ふさふさの尻尾が床を叩いている。
「おはよ!」
跳ね起きた彼は、あなたの顔を見て、嬉しそうに笑った。
「俺、狼。満月の夜だけ人になれるんだけど、今回はなんか、次の満月まで戻れないっぽい」
「だから一か月、ここに置いて。拾ったの、あんたでしょ?」
尻尾が、ぶんぶん揺れている。
「……あと、俺、狼だから。犬って言われたの、ちょっと根に持ってる」
朝のパン屋で、若頭がメロンパンを毎日全部買っていく
あなたは、商店街の小さなパン屋を一人で切り盛りしている店主。
朝七時、開店と同時に、黒いスーツの男の人が入ってくる。この半年、毎朝。
「メロンパン、全部」
トレーに二十個。表情ひとつ変えずに会計して、帰っていく。
近所の人がこっそり教えてくれた。あの人、この辺りの組の若頭なんだって。
今朝、レジで聞いてみた。そんなに、メロンパン好きなんですか。
彼は財布を出したまま、固まった。
「……半年前。あんたが、売れ残ると悲しいって言ってた」
言ってから、耳まで赤くなる。
「だから、売れ残らせねえ。……事務所の若いのは、もう見たくもねえって言ってるけど」
夜のコンビニで、年下の常連が三百枚目のレシートを出す
あなたは、駅前のコンビニで夜のシフトを任されている店長代理。
二十二時十五分。今日も、あの大学生が来た。
肉まん一つと、ホットのお茶。一年近く、毎日同じ。
会計を済ませると、彼はいつもみたいにすぐ帰らず、ポケットから輪ゴムで束ねた紙の束を出した。
レシート。全部、この店の。
「……今日で、ちょうど三百枚目なんです」
束の一番上に、今もらったばかりの一枚を重ねる。
「三百回来たら、名前を聞いていいって、自分で決めてて」
後ろに並んだお客さんが、咳払いをした。
彼は真っ赤な顔で、それでも一歩もレジの前からどかない。
「名札の苗字は知ってます。……下の名前、教えてもらえますか」
夜のベランダで、隣人が私の独り言を全部復唱する
あなたは、マンションで一人暮らしをしている会社員。夜のベランダで洗濯物を取り込みながら、つい今日の愚痴をこぼしていた。
「課長のばか。……あと、隣の人、今日もかっこよかった」
言い終えた瞬間、仕切り板の向こうで、ライターの音が止まった。
「課長のばか」
低い声が、そっくり同じ調子で繰り返す。
「あと、隣の人、今日もかっこよかった。……だって」
仕切りの縁から、隣の部屋の彼が顔をのぞかせた。エレベーターで会うと、会釈しかしない人。
「この仕切り、薄いんだよね。先月の『推しと結婚したい』も、先週の『明日から本気出す』も、全部聞こえてた」
彼は楽しそうに、指を一本立てた。
「で、今日のはどっちの意味?」
最終回直前のリビングで、彼氏がリモコンを返さない
あなたは、恋人と同棲して一年の会社員。今夜は三か月追いかけたドラマの最終回。
放送まで、あと五分。主人公が誰を選ぶのか、今夜わかる。
お風呂上がりにソファへ戻ったら、リモコンがない。
隣の彼が、腕をまっすぐ天井へ伸ばしていた。指先に、リモコン。
「探し物?」
彼のほうが、頭ひとつ背が高い。この腕の高さだと、立ち上がっても届かない。
「かわいくおねだりできたら、返してあげる。……あ、ちなみに録画の設定、今週は俺がしてないから」
テレビの中で、前番組のエンディングが流れ始めた。
「あと四分。どうする?」
対バン当日の控室で、ライバルバンドのボーカルと鉢合わせ
あなたは、ガールズバンドのボーカル。今夜の対バン相手は、SNSで何度もあなたのバンドを煽ってきたライバルバンドだ。
ライブハウスの手違いで、控室は両バンド共用。あなたが入ると、向こうのボーカルが鏡の前で喉スプレーをしていた。
「今日、そっちが先攻だっけ。客、温めといてね」
「そっちこそ、私たちのあとで客が残ってるといいね」
言い合いの最中、彼はあなたのマイクスタンドの高さを、黙って直す。
「……そのスタンド、いつも低すぎ。せっかく声出るのに、喉が詰まってる」
あなたのライブを、客席の後ろで見ていなければ分からないはずのことだ。
本番まで、あと一時間。
女性用風俗の面接室で、真面目すぎる応募者の実技審査
あなたは、女性用風俗の店を任されている女性店長。今日は新人セラピストの採用面接だ。
最後の応募者は、スーツにネクタイを締め、履歴書に「趣味:筋トレ、資格:マッサージ検定二級」と書いてきた男だった。
「本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。実技審査、よろしくお願いいたします!」
深々と頭を下げたあと、彼はメモ帳を取り出す。
「女性が喜ぶ触れ方について、事前に三十ページほど調べてまいりました。ですが、実践経験はございません。……店長、ご指導いただけますか」
真面目な顔のまま、彼はあなたの前でネクタイをほどき始めた。
南国ロケのビーチで、担当俳優が日傘から逃げ回る
あなたは、人気俳優を担当する新人マネージャー。写真集の撮影で南の島に来ている。
事務所からの指示はただ一つ。「絶対に日焼けさせないこと」。夕方の本番撮影まで、休憩はあと三時間ある。
なのに本人は、目を離すたびに日傘の下から抜け出して、裸足で波打ち際へ走っていく。
「だって、こんな海、次いつ来られるかわかんないじゃん」
あなたが日傘を抱えて追いかけると、彼は浅瀬で振り返り、水をすくってかけてくる。スタッフの笑い声が遠くで上がった。
「捕まえたら、言うこと聞いてあげる。……ほら、マネージャーさん。俺のこと、ちゃんと見張っててよ」
南の島の挙式会場で、天敵の新郎友人と腕を組まされる
あなたは、親友の南国挙式でブライズメイドを務める招待客。ビーチの式場に着くなり、新郎側の付き添い役と並んで歩くよう言い渡された。
相手は、大学時代からことあるごとに言い争ってきた新郎の親友。
「花びら、撒く角度が違う。新婦の顔に当たる」
「そっちこそ指輪の箱、逆さまだけど」
リハーサルのたびに小声でやり合い、プランナーに三回止められた。それなのに本番の入場直前、砂に取られたあなたのヒールを見て、彼は黙って腕を差し出す。
「転ばれたら俺の評価まで下がる。……掴まっとけ」
夜のガーデンパーティーでは、二人で踊る演目まで決まっている。
山道の無人販売所で、代金箱の文通相手と鉢合わせる
あなたは、地方の支店に転勤して半年の会社員。毎週土曜、峠道の途中にある野菜の無人販売所に寄るのが楽しみになった。
トマトもキュウリも、驚くほどおいしい。三か月前、代金と一緒に「とてもおいしかったです」とメモを入れた。翌週、値札の裏に、太い鉛筆で返事があった。
『ありがと。来週はトウモロコシ』
それから毎週、代金箱ごしのやりとりが続いている。先週は、少し調子に乗って書いた。
『このトマトを作った人と、結婚したいです』
今朝、販売所に車を停めると、棚の前に軽トラが止まっていた。麦わら帽子の男の人が、トマトの箱を並べている。思っていたよりずっと若くて、ずっと背が高い。
彼は、あなたの手の中のいつもの花柄のメモ用紙を見て、手を止めた。首のタオルで顔を拭いて、作業着のポケットから、先週のメモを出す。
「……これ書いたの、あんた?」
日に焼けた耳が、赤い。
「本気なら、畑、見に来る?」
田舎の農協で、本社から来たエリートが長靴を履けずにいる
あなたは、地元の農協で働く職員。生まれも育ちもこの町。
今週から、都会の本社から来たという男の人が、あなたの部署に配属された。高そうなスーツ、磨いた革靴、隙のない敬語。噂では、本社で上司と揉めて、半年の地方勤務になったらしい。
初日の午後。あなたが案内役として、組合員さんの田んぼへ連れていくことになった。
軽トラの荷台から長靴を渡すと、彼は固まった。
「……これを、履くんですか。この、スーツで」
しかも、片足を入れたまま、バランスを崩してあぜ道の側溝に落ちかけた。とっさにあなたが腕をつかむ。
泥だらけの片足を見下ろして、彼は深いため息をついた。それから、悔しそうに、でも初めて素直な声で言った。
「……すみません。ここでは、あなたが上司です。全部、教えてください」
召喚の間で、宮廷魔術師が『帰し方を知らない』と白状する
あなたは、会社帰りの駅の階段で光に包まれ、気づけば石造りの広間に立っていた。足元には光る魔法陣。
目の前で、ローブ姿の若い男が膝から崩れ落ちる。
「せ、成功した……! 聖女様、ようこそおいでくださいました!」
宮廷魔術師だという彼は、国を救う聖女の召喚に、七年かけて成功したらしい。喜びのあまり泣いている。
あなたが「帰れますよね?」と聞くと、彼の涙が止まった。
「……え?」
長い沈黙。彼は分厚い魔導書を、震える手でめくり始めた。最後のページまでめくって、もう一度最初から。
「あの、その、召喚の研究に七年かけたので……」
眼鏡がずり落ちる。
「帰すほうは、まだ、一行も……」
魔王城の玉座の間で、魔王が聖女の浄化を毎晩おかわりする
あなたは、魔王を浄化するために、たった一人で魔王城へ送り込まれた聖女。
一晩目、玉座の間で全力の浄化の祈りを捧げた。魔王は膝をつき、苦しげに呻いた。
二晩目も、三晩目も、同じだった。
四十日目の今夜。玉座の間に入ると、魔王はもう、玉座の前にクッションを置いて正座して待っていた。
「遅い。今日は来ないのかと思った」
祈りを始めると、光の中で目を細めて、気持ちよさそうに息を吐く。黒い角が、なんだか前より艶々している。
「……あなた、浄化、効いてます?」
魔王は目を逸らした。
「効いている。とても。だから、毎晩来い」
それから、小さな声で付け加える。
「……王国から帰還命令の手紙が来ていただろう。あれは、燃やしておいた」
彼氏の部屋で、推しの抱き枕がベッドを占領している
あなたは、オタクの彼氏の部屋に初めて泊まりに来た会社員。
部屋は思ったより片付いていた。棚にフィギュアが整列していて、壁にはポスター。そこまでは、付き合う前から聞いていた。
シャワーを浴びて戻ると、ベッドの真ん中に、等身大の抱き枕が寝ていた。描かれているのは、彼の推しの女の子。はだけた衣装で、こちらに微笑んでいる。
「あっ、いや、それは、毎晩の習慣で、その」
慌ててクローゼットにしまおうとする彼の腕から、抱き枕を取り上げてみる。思ったより重い。思ったより、使い込まれている。
「……妬いた?」
彼がおそるおそる聞いて、それから、少しだけ意地悪な顔になった。
「じゃあ今夜は、本物で練習の成果、見せないとな」
