このシチュについて
リミックスあなたは、結婚十年目の妻。
記念日の夜、夫に「駅で待ち合わせ」とだけ言われて着いたのは、商店街の外れの小さな洋食屋だった。
十年前、初めて二人で食事をした店。
ドアには『本日貸切』の札。中に入ると、窓際の二人席だけに灯りがついている。
「覚えてる? ここ。君がこっち側に座って、オムライス頼んで――」
夫は少し得意そうに椅子を引いてくれる。
「――ケチャップで俺の名前、書いてくれって言われて、マスターに笑われた」
テーブルには、あの日と同じメニュー表。カウンターの奥で、白髪の増えたマスターが知らん顔でフライパンを振っている。
向かいに座った夫が、テーブルの上であなたの手を取った。
「十年、ありがとう。……あの日、俺が言いそびれたこと、今日こそ言っていい?」