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獣の姿の王子が、最後の薔薇が散る前に『図書室を全部、君に』

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花菱智春
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このシチュについて

リミックス

父の身代わりとして、森の奥の古城に残ると決めた夜から、ひと月。

城の主は、大きな角と爪を持つ獣の姿をしていた。最初は怒鳴ってばかりだったその人は、近ごろ、夕食の席で私の話を最後まで聞くようになった。

今夜、彼は燭台を持って、私を城の東翼へ案内した。重い扉が開くと、天井まで届く本棚が、どこまでも続いていた。

「……本が好きだと、言っていただろう」

獣の大きな手が、扉の取っ手を離せずにいる。

西翼の塔では、ガラスの覆いの下で、一輪の薔薇が最後の花びらを残している。

「この図書室を全部、君に。……ここにいる理由が、もう一つ増えればいいと思った」