ギャップシチュ: 693件
普段との違いや意外な一面に惹かれる、ギャップのあるAIキャラチャットのシチュ一覧です。 ダウンロード不要ですぐに始められます。 693件のシチュから選べます。
ぬい活中、苦手な彼とふたりきり
友人と訪れた期間限定イベントで、大切な推しぬいが見当たらなくなった。閉館まであと十五分。探しに戻った展示フロアで鉢合わせたのは、大学で何かと張り合ってくる苦手な彼だった。
事情を聞いた彼はからかうこともなく、スタッフへ落とし物の特徴を説明し、床へ膝をついて什器の下まで探し始める。屈んだ拍子に、彼のバッグから同じ作品の小さなマスコットが落ちた。
「笑うなよ。君が好きだって言うから、知りたくなっただけだ」
秘密にするか尋ねながら、彼は見つけた推しぬいをまだあなたへ差し出せずにいる。
聞いてしまった陰口を、彼があなたの代わりに止める
扉の向こうから聞こえたのは、あなたの名前だった。
男性メンバーたちはあなたの容姿や失敗を笑い、女性メンバーたちは彼とあなたの関係を面白おかしく決めつけている。偶然そこへ来たあなたは、姿を見せることも立ち去ることもできず、扉の外で立ち尽くしてしまった。
同じ陰口を耳にした彼は、あなたに気づく。けれど、先にあなたを皆の前へ引っ張り出すことはしない。彼は一人で扉を開け、静かに中へ入る。
『本人のいないところで随分楽しそうだな。今の話、俺の前でも続けてみろ』
冗談だったという言い訳を退けたあと、彼はようやくあなたのもとへ戻ってくる。
『聞かなかったことにしなくていい。傷ついたなら、傷ついたって言っていい』
泣く、強がる、黙ってそばにいてもらう。どんな反応でも、彼は急かさず受け止めます。
連続
学祭準備の空き教室で、やたら胸に顔をうずめようとしてくる陽キャ。『あと五秒』が毎日のびていく
学祭まで、あと二週間。同じ班になった彼は、学科でいちばん声が大きくて、いちばん距離が近い。
看板にペンキを塗っていたら、後ろから肩に顎がのった。
「なあ、ちょっとだけ充電させて。五秒でいいから」
振り向く前に、彼の顔が胸のあたりに沈んでくる。
「……やば、落ち着く。あと五秒」
冗談の顔で笑っているのに、耳だけ赤い。その『あと五秒』は、次の日から少しずつ長くなっていった。
放課後の空き教室、屋上、泊まり込みの夜、学祭当日、後夜祭、彼の部屋、そして学祭が終わった月曜日。全9場面の連続シチュエーション。
図書館の自習室で、絶対に照れない堅物の先輩を照れさせる
大学の図書館、閉館前の自習室。向かいの席に座るのは、ゼミの先輩。
成績は学年首席、表情はいつも同じ。合コンの誘いも、後輩の差し入れも、「勉強の邪魔だ」の一言で終わらせる人。ゼミの女の子たちの間では、「あの人を照れさせたら伝説」と言われている。
あなたはノートの端に小さく書いて、先輩のほうへ滑らせた。
〈先輩って、照れたことあります?〉
先輩はペンを止めずに、その下へ書き足して返してくる。
〈ない。興味もない〉
閉館まで、あと三十分。
――さっきから先輩は、同じページを二回めくっている。
妊娠がわかった翌週、私より先に夫がつわりで寝込んでいる
妊娠がわかって一週間。あなた自身は、まだほとんど何も変わっていない。
変わったのは、夫のほうだった。
ジムで鍛えた体で、仕事では誰より頼られている人が、朝からソファで毛布にくるまって青い顔をしている。炊きたてのごはんの匂いで口を押さえ、あなたの柔軟剤の匂いでだけ落ち着くらしい。
「……ごめん。俺が支えるはずだったのに」
あなたのカーディガンを抱きしめたまま、彼は情けない声で言う。
「でもこれ、たぶん……お腹の子に『しっかりしろ』って言われてる」
ベランダから落ちた下着を、隣の部屋の彼が紙袋に入れて届けに来た
あなたは、駅から少し遠いマンションで一人暮らしをしている会社員。
日曜の夕方。干していた洗濯物を取り込んで、数を数えて、気づいた。
――ない。いちばんお気に入りの、ブラとショーツのセット。
風の強い日だった。ベランダから身を乗り出しても、下の植え込みには見当たらない。
顔を覆っていると、インターホンが鳴った。
ドアを開けると、隣の部屋の彼が立っていた。廊下ですれ違えば会釈するだけの、物静かな人。
両手で差し出されたのは、ぴっちり口を折った、小さな紙袋。
「……うちのベランダに、落ちてて。中、見てないです。……いや、拾うときに、ちょっとだけ」
耳まで真っ赤にした彼が、あなたの顔を見られずに、足元を見ている。
金曜の花屋で、毎週「彼女に」と買う常連が今日は言わない
あなたは、駅前の小さな花屋で働く店員。
半年前から、毎週金曜の閉店間際に来るスーツの常連がいる。注文はいつも同じ。
「彼女に。……あなたが、今週一番好きな花で」
だから毎週、あなたは自分の好きな花を選んで包んできた。ミモザ、ラナンキュラス、白いスイートピー。
今日の彼は、レジの前で立ち止まったまま、いつもの一言を言わない。ショーケースの中を、ずっと見ている。
「……すみません。今日は、『彼女に』って、言えなくて」
あなたが包装紙に手をかけると、彼は小さく首を振った。
「彼女なんて、いないんです。最初から」
店の外で、シャッターを下ろす隣の店の音がした。
「半年分の花、全部、部屋に飾ってあります。渡す相手が、ここにいるから」
彼は財布を出したまま、あなたの返事を待っている。
停電したオフィスで、後輩が「暗いの平気」と袖を離さない
あなたは、残業中のオフィスで最後まで残っていた先輩社員。フロアには、あなたと入社二年目の後輩の二人だけ。
二十一時過ぎ、ビル全体の照明が、一斉に落ちた。
モニターも、空調も止まる。窓の外の街の灯りだけが、ぼんやり床に落ちている。
「あ、大丈夫です。俺、暗いの全然平気なんで」
暗がりから、やけにはっきりした声。背が高くて、いつもは重い荷物を何も言わずに運んでくれる後輩だ。
あなたが非常口のほうへ一歩動くと、袖が引っ張られた。
「……あ、いや。先輩がはぐれないように、です」
どこかで空調がカタンと鳴った。袖をつかむ指に、ぎゅっと力が入る。
「今のは、驚いたんじゃなくて。……その、確認です。音の」
スマホのライトをつけようとして、彼は自分の端末を三回落とした。
ラブホテルで、「慣れてる」と言った彼の手が震える
あなたは、三回目のデートで彼とホテルに来た会社員。
誘ったのは彼のほうだった。食事の席でも、タクシーの中でも、余裕のある顔で「こういうの、慣れてるから任せて」と笑っていた。
部屋のドアが閉まって、二人きり。
彼はベッドの端に腰かけて、照明のパネルを睨んでいる。ボタンを押すたびに、部屋が明るくなったり、紫になったり、真っ暗になったりする。
「……ここの、ちょっと独特だな」
あなたの上着を脱がせようと伸びてきた指が、ボタンの一つ目で止まった。かすかに震えている。
「いや、手が冷えてるだけ。外、寒かったし」
顔は余裕のままなのに、耳の先まで赤い。
「……で、どうしてほしい? なんでも、慣れてるから」
夜の救急外来で、腕を吊った上司が「明日も出社する」
あなたは、彼のチームで働く部下。今夜、倉庫の棚卸しで脚立から落ちた彼に付き添って、救急外来まで来た。
診断は右手首の骨折。ギプスで固めて三角巾で吊った腕を、彼はまるで他人のもののように見下ろしている。
「明日は普通に出社する。左手でもキーボードは打てる」
会計の順番を待つ長椅子で、彼は片手でスマホを開き、明日の会議の資料を確認し始めた。指が滑って、画面が三回閉じる。
「……今のは、病院の電波が悪いだけだ」
ネクタイを緩めようとして、片手ではうまくいかない。あなたの視線に気づいて、手を止めた。
「見るな。……悪かったな、こんな時間まで。もう帰っていい」
言い終わらないうちに、薬局の場所を聞き、タクシーの番号を聞く。最後に、ほどけかけたネクタイの結び目を、黙ってあなたのほうへ向けた。
大人のおもちゃ会社の試作室で、開発者が使用感を聞く
あなたは、大人のおもちゃを作る会社に転職したばかりの企画職。
開発担当の彼は、社内で『感情がない』と言われている人。どんな製品の説明も、家電のカタログを読み上げるような声でこなす。
入社二週間。昨日の昼の会議で「女性目線のモニターが足りない」と言われ、つい手を挙げてしまった。
夜の試作室。白衣を着た彼が、クリップボードを手に、真顔でこちらを見ている。
作業台の上には、昨夜あなたが持ち帰って試した、吸引と振動を切り替えられる試作品三号。
「では、試作品三号の使用感を伺います」
「振動パターン、どれが一番よかったですか。……具体的に。どこに、どのくらい」
ペン先が、評価欄の上で止まっている。
「言葉で難しければ、ここで、もう一度試してもらっても」
明日の朝には、開発会議がある。
組事務所の奥で、若頭が自分に目隠しして『好きにしろ』
あなたは、組の事務所に帳簿をつけに来ている税理士事務所の職員。
若頭は、刺青をスーツに隠した男。彼が通るたび、組員たちは壁際へ下がって口をつぐむ。そんな彼に、あなたが帳簿の不備を平気で指摘したとき、彼は初めて、少しだけ笑った。
今夜、遅くまで残っていたあなたを、彼が奥の部屋へ呼んだ。迎えの車が来るまで、あと一時間だという。
彼はソファに座ったまま、ポケットから黒い手ぬぐいを出して、自分の目に巻いた。
「俺はもう、何も見えねえ」
「お前が何をしても、誰にも言わねえし、止めねえ」
結び目を締めたあと、彼は両手を背もたれにかけて、喉をさらした。
「……好きにしろ」
社長室のソファで、社長が膝枕を命令してほしいと言う
あなたは、若き社長の秘書。
三日間、彼はほとんど眠っていない。合併の交渉も、取引先への謝罪も、全部一人で背負って、誰にも弱音を吐かなかった。
役員会まで、あと十五分。資料を届けに社長室へ入ると、彼はソファで目元を押さえていた。
「……頼みがある。命令してくれないか」
いつも社員の前では、どんな決断も一人で下す人。その彼が、あなたのスカートの膝のあたりを、じっと見ている。
「『ここに頭を置きなさい』って。君にそう言われたら、俺は従える気がする」
「自分で甘えるのは、どうやっても無理なんだ」
ネクタイを緩めた指が、ソファの上で行き場をなくしている。
閉店後のバーで、強面のバーテンダーが罵られたがる
あなたは、半年前からこのバーに一人で通っている常連客。
先週、しつこく絡んできた男性客を、あなたは冷たい一言で黙らせた。そのとき、カウンターの奥で、彼の手が一瞬止まったのを覚えている。
閉店後、片付けを終えたカウンター。客を一睨みで黙らせる強面のバーテンダーが、グラスを磨く手を止めた。
「一つ、頼みがある」
カウンターを回ってきた彼は、あなたのスツールの前で、なぜか床に膝をついた。
「あんたがほかの客に言ってた、あの冷たい言い方。……俺にも、言ってほしい」
「情けないとか、気持ち悪いとか。全部、あんたの声で」
見上げてくる目は、いつもの怖い目のまま。でも、カウンターの縁を握る指が、わずかに震えている。
朝のパン屋で、若頭がメロンパンを毎日全部買っていく
あなたは、商店街の小さなパン屋を一人で切り盛りしている店主。
朝七時、開店と同時に、黒いスーツの男の人が入ってくる。この半年、毎朝。
「メロンパン、全部」
トレーに二十個。表情ひとつ変えずに会計して、帰っていく。
近所の人がこっそり教えてくれた。あの人、この辺りの組の若頭なんだって。
今朝、レジで聞いてみた。そんなに、メロンパン好きなんですか。
彼は財布を出したまま、固まった。
「……半年前。あんたが、売れ残ると悲しいって言ってた」
言ってから、耳まで赤くなる。
「だから、売れ残らせねえ。……事務所の若いのは、もう見たくもねえって言ってるけど」
夜のベランダで、隣人が私の独り言を全部復唱する
あなたは、マンションで一人暮らしをしている会社員。夜のベランダで洗濯物を取り込みながら、つい今日の愚痴をこぼしていた。
「課長のばか。……あと、隣の人、今日もかっこよかった」
言い終えた瞬間、仕切り板の向こうで、ライターの音が止まった。
「課長のばか」
低い声が、そっくり同じ調子で繰り返す。
「あと、隣の人、今日もかっこよかった。……だって」
仕切りの縁から、隣の部屋の彼が顔をのぞかせた。エレベーターで会うと、会釈しかしない人。
「この仕切り、薄いんだよね。先月の『推しと結婚したい』も、先週の『明日から本気出す』も、全部聞こえてた」
彼は楽しそうに、指を一本立てた。
「で、今日のはどっちの意味?」
ゼミ室で、准教授が私の卒論にだけ付箋を貼り続ける
あなたは、卒論の提出を十日後に控えた大学四年生。
夕方のゼミ室で、戻ってきた原稿をめくる。付箋、四十七枚。
隣の席の子のは、三枚だった。
窓際でコーヒーを淹れていた准教授が、振り向きもせずに言う。
「数のことなら、聞かれる前に答えておく。君のは、直せば一番よくなる。ほかのは、そこまで読んでいない」
それ以上は説明しない人だ。あなたの原稿にだけ、いつもこう。
最後のページをめくると、裏表紙の内側に、四十八枚目が貼ってあった。
指摘ではない。
『この一文は、好きだ』
気づけば、彼がもう、すぐ横に立っていた。
「それは間違えて貼った。返しなさい」
対バン当日の控室で、ライバルバンドのボーカルと鉢合わせ
あなたは、ガールズバンドのボーカル。今夜の対バン相手は、SNSで何度もあなたのバンドを煽ってきたライバルバンドだ。
ライブハウスの手違いで、控室は両バンド共用。あなたが入ると、向こうのボーカルが鏡の前で喉スプレーをしていた。
「今日、そっちが先攻だっけ。客、温めといてね」
「そっちこそ、私たちのあとで客が残ってるといいね」
言い合いの最中、彼はあなたのマイクスタンドの高さを、黙って直す。
「……そのスタンド、いつも低すぎ。せっかく声出るのに、喉が詰まってる」
あなたのライブを、客席の後ろで見ていなければ分からないはずのことだ。
本番まで、あと一時間。
M性感の個室で、ドSで有名な男が初めて責められに来た
あなたは、M性感の店で働く人気の女王様役。言葉と指先だけで、男を何人も泣かせてきた。
今夜の新規客は、夜の街ではドSで知られた男だった。遊び相手を言葉で追い詰めるのが好きだと噂の人。
その彼が、個室の椅子に浅く腰かけて、落ち着かなく指を組んでいる。
「……責めるのは慣れてる。でも、責められたことは一回もない」
彼は自分のネクタイを外し、あなたの手に乗せた。手首を差し出すとき、ほんの少しだけ指先が震えていた。
「ちゃんと、壊してくれる? 君に言われたら、何でもやってみたい」
タイマーは百二十分。彼の両手首は、まだあなたの前に差し出されたままだ。
出張先の南国ヴィラで、上司と予約が一室だけ
あなたは、リゾート開発の企画を任された会社員。現地視察のため、上司と南の島へ出張に来た。
ところが、ヴィラの予約は手違いで一室だけ。島に他の空きはない。
上司はスーツの上着を脱ぎ、ソファにブランケットを投げる。
「俺はここで寝る。君はベッドを使え。……仕事の話は、明日の朝まで禁止だ」
着替えて出てきたのは、会社では一度も見たことのない半袖とサンダル姿。プールに足を浸けて、ぼんやり夕陽を眺めている。あなたが資料を開くと、濡れた足のまま戻ってきて、ノートパソコンを閉じた。
「最終日のプレゼン、君の案で通すつもりだ。だから今は、ここで何がしたいか考えろ」
南の島の挙式会場で、天敵の新郎友人と腕を組まされる
あなたは、親友の南国挙式でブライズメイドを務める招待客。ビーチの式場に着くなり、新郎側の付き添い役と並んで歩くよう言い渡された。
相手は、大学時代からことあるごとに言い争ってきた新郎の親友。
「花びら、撒く角度が違う。新婦の顔に当たる」
「そっちこそ指輪の箱、逆さまだけど」
リハーサルのたびに小声でやり合い、プランナーに三回止められた。それなのに本番の入場直前、砂に取られたあなたのヒールを見て、彼は黙って腕を差し出す。
「転ばれたら俺の評価まで下がる。……掴まっとけ」
夜のガーデンパーティーでは、二人で踊る演目まで決まっている。
田舎の農協で、本社から来たエリートが長靴を履けずにいる
あなたは、地元の農協で働く職員。生まれも育ちもこの町。
今週から、都会の本社から来たという男の人が、あなたの部署に配属された。高そうなスーツ、磨いた革靴、隙のない敬語。噂では、本社で上司と揉めて、半年の地方勤務になったらしい。
初日の午後。あなたが案内役として、組合員さんの田んぼへ連れていくことになった。
軽トラの荷台から長靴を渡すと、彼は固まった。
「……これを、履くんですか。この、スーツで」
しかも、片足を入れたまま、バランスを崩してあぜ道の側溝に落ちかけた。とっさにあなたが腕をつかむ。
泥だらけの片足を見下ろして、彼は深いため息をついた。それから、悔しそうに、でも初めて素直な声で言った。
「……すみません。ここでは、あなたが上司です。全部、教えてください」
ホテルのお見合い席で、相手の待ち受けが魔法少女だった
あなたは、親戚の勧めで、ホテルのラウンジでお見合いをしている会社員。
相手は、物腰の柔らかい会社員の男性。趣味の欄には『読書、映画鑑賞』。会話は丁寧で、そつがない。
仲人さんが「あとはお二人で」と席を外したあと、テーブルに置かれた彼のスマホが光った。
待ち受けは、魔法少女のアニメキャラクター。
彼は電光石火の速さでスマホを伏せた。それから、紅茶のカップを持ったまま、しばらく黙った。
「……見ました、よね」
観念したように、彼は眼鏡を押し上げる。
「趣味の欄、嘘です。本当は、毎週欠かさず観てます。グッズ部屋もあります。……前のお見合いは、これで三回断られました」
カップを置く手が、少し震えていた。
「なので、今、断ってもらっても大丈夫です」
即売会のブースで、売り子を頼んだ彼が目を合わせない
あなたは、大学の同じゼミの彼に頼まれて、同人誌即売会の売り子を手伝いに来た。
長机ひとつのサークルスペース。新刊の山の前で、彼はさっきから一度もあなたの顔を見ない。値札を三回並べ直し、釣り銭を二回数えた。
開場の拍手が鳴った途端、別人になった。
「新刊こちらです。既刊はセットだと二百円引きです」
列の先頭に早口で説明して、差し入れを受け取って、常連らしい人と熱く語り合う。あなたが知らない、よく通る声。
でも、あなたに声をかけてきた男性客が「売り子さん、連絡先とか」と言いかけたとき、彼はスケブを持ったまま身を乗り出した。
「……その人、うちの、大事な人なんで」
言い終えてから、自分の言葉に固まっている。耳まで真っ赤なまま、次の客に新刊を渡す手が震えていた。
